ゲームブック

ゲームブックは1980年代後半に流行し、そのあと急速に廃れましたが、2000年頃から次第に復興しつつあります。ゲームブックは楽しい読解を可能としますので、これを日本語教育に生かさない手はありません。

ゲームブック「好きな人に告白」

拙著「新物語 快楽読解」からゲームブックを抜粋します。出版社から短編を書くよう指示されたので、このゲームブックもパラグラフが8のみです。各パラグラフの下に、言葉の解説を行っています。教材としても使えますが、授業中、スクリーンに映し出して、学習者に選択を考えてもらうのもよいです。楽しみながら読解力が身に付きます。蘇州の職業学校で、授業態度のあまりよくないクラスに実施したとき、皆から好評が得られました。

 

 登場人物

 

  丸山友子(まるやまゆうこ)……中学2年生の女の子。

  田中勇二(たなかゆうじ)……男の子。サッカー部のキャプテン。

  筒井一郎(つついいちろう)……男の子。

  板垣加奈子(いたがきかなこ)……女の子。友子の親友。

  

 

 わたしは丸山友子。中学2年生だ。実はわたしには密かに片思いしている男の子がいる。

 彼は隣のクラスの男の子で、名前は田中勇二。サッカー部のキャプテンをしている。無愛想だけれど、サッカーに打ち込む姿がとてもかっこいいのだ。告白しようかな。でも、ふられるのが恐い。どうしよう。

 

告白する……4へ行く

友達に相談する……6へ行く

 

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片思い(かたおもい)【名】……一方的に恋すること。

ャプテン(captain)【名】……スポーツのチームの主将。

無愛想(ぶあいそう)【な形】……人に対して、感じが悪い様子。

打ち込む(うちこむ)【自五】……熱中する。

ふられるのが恐い

 解説:自分の告白が相手に拒否されるのが恐い。

 

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「勇二君のこと、好きなの。わたしと付き合ってください」

 わたしは思い切って言った。

 「えっ、本当? 実は俺も……、お前のこと、気になってたんだよ」

 わたしは花が開くように満面の笑みを浮かべた。

 やった! 成功だ!

 それから、わたしと勇二君の幸せな恋が始まった。春も夏も2人でいっしょに過ごした。そうして、秋になると、相手の短所も長所もよくわかるようになっていた。

 勇二君は少し乱暴なところがあった。ケンカになると、わたしの頭を叩くのだ。わたしは悲しくて、そして残念だった。

 「あのう、丸山さん」

 わたしはある日、違うクラスの男の子に、体育館の裏へと呼び出された。背が高くて、肌が白くて、清潔感のある人だった。顔も優しそうだ。わたしはちょっと動揺した。体育館の裏に行くと、冷たい風が吹いていた。周りに人は誰もいない。

「俺、丸山さんのこと、好きです」男の子は、わたしの目を見て、言った。

「え……」

 どうしよう、そんなこと、急に言われても。

「本気です。ずっと好きでした。付き合ってください」

 わたしには勇二君がいる。けれど……、最近、あの乱暴なところが嫌になっていた。

「返事してください」男の子は、真摯な顔で返事を待っている。

 

●「勇二君がいるから」と言って、告白を断る……5へ行く

●勇二君と別れて、この男の子と付き合う……8へ行く

 

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思い切る(おもいきる)【他五】……よく考えて、決心すること。

長所(ちょうしょ)【名】……性格の悪いところ。

気になってたんだよ

解説:この場面の「気になる」は、「好きだ」の婉曲的表現。

 

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わたしは勇二君のことをあきらめた。所詮、運命の人ではなかったのだ。ある日、隣のクラスの男の子から、体育館の裏に呼び出された。清潔感のある、優しい感じの人だった。筒井一郎という名前だった。

「好きです、付き合ってください」と言われた。

 わたしは少し考えてから、「うん、いいよ」と返事した。寂しくて、誰かに側にいて欲しかった。一郎君がどんな人か、よく知らなかったけれど、付き合ってみると、とても気が合った。

 私の心の中から、勇二君が消え、そして一郎君でいっぱいになっていった。

 

END

 

 

放課後、わたしは勇二君を教室から呼び出し、非常階段の近くへ来てもらった。ここは人も少ない。

 「なに? 俺、サッカーの練習あるんだけど」

 勇二君は急かすように言った。

「ごめん、あのね。わたし……」

 心臓がドキドキしてきた。何と言えばいいだろう。

 

●「勇二君のこと、好きなの。わたしと付き合ってください」……2へ行く

●「わたしのこと、どう思う?」……7へ行く

 

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放課後(ほうかご)【名】……学校の授業が全部終わった後。

非常階段(ひじょうかいだん)【名】……火事や地震などの災害のとき、建物から逃げ出すための階段。

急かす(せかす)【他五】……「急がせる」と同じ。

 

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「ごめんね。わたし、彼氏がいるの」わたしは言った。

 また1つ、冷たい風が吹いた。

 男の子は沈黙の後で、「そう、わかった」と去っていった。

 これでよかったんだ。だって、あんなに好きだった勇二君だもん。ちょっと乱暴だからって、簡単に裏切れるわけない。

 わたしは勇二君にお願いしてみた。怒ったときは、もっと冷静になって、わたしのことを叩かないで、と。勇二君は意外と素直に「わかった、今までごめんな」と謝ってくれた。わたしはそんな勇二君が今まで以上に好きになった。

 秋が過ぎ、冬になった。そして2人に二回目の春が訪れようとしていた。時とともに、わたしと勇二君の愛は深まっていった。

 勇二君、これからも、ずっと2人でいようね。

 

 END

 

 

 

わたしは友達の加奈子に相談した。いちばんの仲良しだった。

 「そんなの絶対告白したほうがいいに決まってるじゃない」加奈子は事も無げに言った。「でも、ふられたらどうするの」とわたし。

「大丈夫だって。友子可愛いもん。性格も優しいしさー」

そう言われて、わたしはにわかに自信を持った。

よしっ、告白するぞー!

 

●……4へ行

 

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仲良し(なかよし)【な形】……親しい間柄。

にわか……突然。

事も無げに(こともなげに)

 解説:平気な様子。非常に簡単な様子。

可愛いもん

 文型:普通体+もん

 解説:断定・強調を表わす。

 例文:A「どうして寿司食べないの?」B「だって、おいしくないもん」

 

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「わたしのこと、どう思う?」

 わたしは遠まわしに聞いた。

 直接「好きです」なんて、とても言えない。

 「どうって……、別に……」

 勇二君はうつむいて言った。

 「別にって……」ちょっとショックな言葉だった。

 別に興味なんかない、ということ? 

 「じゃ、俺、部活あるから」

 勇二君は言って、さっさと行ってしまった。

 そ、そんなー。

 わたしは1人、残された。告白は失敗してしまった。

 

●勇二君のことをあきらめる……3へ行く

●あきらめきれない。もう一度、告白する……4へ行く

 

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遠まわし(とおまわし)【な形】……直接ではなく、間接的に。

うつむく(俯く)【自五】……て形「うつむいて」。頭を前に垂らすこと。

とても言えない

 文型:とても+否定

 解説:ある事ができない状態を示す。

 例文:家が貧しいから、親に「パソコン買って」とは、とても言えなかった。

 

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 わたしは、男の子の告白に対して、「いいよ」と小声で言った。

「本当?」

「でも、ちょっと待って」わたしはためらいがちに言った。「付き合う前に、しなきゃならないことがあるから……」

 夜、勇二君に電話した。別れたい、と告げた。彼は「ちょっと待ってくれよ」と慌てた。

「どうしてだよ。俺のどこがダメなんだよ」

「わたし、勇二君の乱暴なところ、嫌いなの」

「わかった、悪かったよ。もう二度と叩いたりしないから」

「もうだめ、もういいよ」

 胸が苦しくなってきた。わたしは耐え切れずに電話を切った。悪いのは、わたしのほうだ。こんな一方的に別れようとするなんて……。

 不意に涙がこみあげてきて、わたしは1人で泣き出した。結局、わたしはその男の子とは、付き合わなかった。とてもそんな気分になれなかった。わたしにとって勇二君はあまりにも大きくて、彼を失ってから、何も手につかなくなった。

 廊下ですれ違っても、彼はわたしを見ようともしない。

 わたしは本当にバカだ。だけど、後悔しても、もうどうにもならないのだ。

 ごめんね、勇二君。

 わたし、勇二君のこと、影でずっと見つめているから……。

 

 END

 

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ためらい【名】……決断できず、迷うこと。

何も手につかなくなった

 解説:他の事を考えてしまい、集中できない。

 

 

 

 

 

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